「未経験から社内SEを目指したいけれど、理系じゃないし無理だろうか」
「文系出身や第二新卒だと、専門職である社内SEには受からないのではないか」
これからIT業界、特に企業のシステムを守る「社内SE」を目指そうとしている方の中には、このような不安を抱えている方が多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、未経験や文系出身であっても、社内SEになることは十分に可能です。
私自身、現役のインフラエンジニアとして多くの現場を見てきましたが、技術力と同じくらい「コミュニケーション能力」や「業務への理解」が求められる社内SEの現場では、文系出身者が活躍しているケースは珍しくありません。
ただし、単に「パソコンが好き」という理由だけで採用されるほど甘くないのも事実です。
そこで重要になるのが、企業が未経験者に何を求めているのかという「ポテンシャル」の正体を理解し、正しい戦略で準備をすることです。
この記事では、インフラエンジニアとして監視設計や運用に携わってきた私の視点から、未経験・文系の方が社内SEとしてのキャリアをスタートさせるための具体的な戦略と学習法を解説します。
曖昧な精神論ではなく、現場で本当に評価される「根拠」のあるアプローチをお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
社内SEは未経験・文系には「難しい」のか?実態とポテンシャル採用

まず、「社内SEは未経験には難しい」「文系では受からない」という噂の真偽と、現在の採用市場の実態について整理しておきましょう。
なぜなら、敵を知らずして戦うことはできないからです。
「受からない」と言われる理由と市場の変化
かつて社内SEといえば、即戦力となるベテランエンジニアが転職して就くポジションというイメージが強いものでした。
企業内のネットワーク構築からPCのキッティング、トラブル対応までを一人でこなす「ひとり情シス」のような環境が多く、教育コストをかけられない企業が多かったためです。
そのため「未経験お断り」の空気が強く、これが「受からない」「難しい」と言われる最大の理由でした。
しかし、現在は状況が大きく変わっています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、IT部門の業務量は爆発的に増加しており、経験者だけでは全く人が足りていないのが現状です。
実際、経済産業省の調査でも、IT需要の拡大に伴い、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足する可能性があると試算されています。この圧倒的な人手不足が、未経験者への門戸を広げる最大の要因となっています。
その結果、企業は「今は技術がなくても、将来的に伸びる人材」を採用し、自社で育成する「ポテンシャル採用」へと舵を切り始めています。
特に20代の若手層に対しては、現時点でのスキルよりも、ITへの適性や学習意欲を重視する傾向が強まっています。
新卒・第二新卒・20代に求められる「ポテンシャル」とは
では、企業が新卒や第二新卒、20代の未経験者に求めている「ポテンシャル」とは具体的に何でしょうか。
それは「論理的思考力」と「自走力」、そして「コミュニケーション能力」の3点に集約されます。
技術は入社後に教えられても、論理的に物事を考える癖や、周囲と円滑に業務を進める力は、一朝一夕では身につかないからです。
特に社内SEの業務は、黙々とコードを書くことよりも、社員からの「ネットが繋がらない」「システムが使いにくい」といった問い合わせに対応するヘルプデスク業務や、ベンダーとの折衝業務が多くの割合を占めます。
したがって、技術的に未熟であっても、「相手の意図を正しく汲み取り、わかりやすく説明できる力」があれば、それは大きなポテンシャルとして評価されます。
文系出身者が活かせる意外な強み
ここで強調したいのが、文系出身者特有の強みです。
社内SEの「顧客」は、同じ会社の社員たちです。
その多くはITの専門家ではないため、専門用語を並べ立てても会話が成立しません。
「なぜその設定が必要なのか」「どうすれば業務が効率化されるのか」を、非エンジニアの言葉で噛み砕いて翻訳し、説明する能力は、理系エンジニアよりも文系出身者の方が長けているケースが多々あります。
私自身、難解なインフラの仕組みを「腹落ち」するように解説することを信条としていますが、この「難解なことを言語化するスキル」こそが、社内SEにとって最強の武器になります。
文系であることを引け目に感じる必要はありません。
むしろ、「技術と言葉の架け橋」になれる素質があると考え、自信を持って挑戦してください。
未経験から社内SEを目指すための「3つの戦略」

精神的な心構えができたところで、次は合格率を上げるための具体的なアクションプランについて解説します。
漠然と応募するのではなく、以下の3つの戦略を意識して準備を進めてください。
戦略1:「なぜ社内SEか」を突き詰めた志望動機の作成
未経験者の採用面接において、最も厳しく見られるのが「志望動機」です。
ここでの失敗例として多いのが、「手に職をつけたい」「IT業界が伸びているから」「プログラミングに興味がある」といった、自分本位な理由です。
これでは「別に社内SEじゃなくてもいいよね?」「Web制作会社に行けば?」と返されてしまいます。
社内SEを目指すのであれば、「ITの力を使って、組織や事業を内側から支えたい」という視点が必要です。
例えば、「前職の営業事務で非効率な業務フローがあり、それをITツールで改善した時にやりがいを感じた」といった、実体験に基づいたエピソードを用意してください。
「動けばいい」ではなく、システムを通じて「誰のどんな課題を解決したいのか」という根拠を語れるように準備しましょう。
戦略2:インフラ・ネットワークの基礎知識を武器にする
未経験からエンジニアを目指す際、多くの方がプログラミング(JavaやPythonなど)の学習から入ります。
もちろんプログラミングも大切ですが、社内SEを目指すのであれば、私は「インフラ・ネットワークの基礎知識」を優先して学ぶことを強くおすすめします。
なぜなら、社内SEの業務において、トラブルシューティングの基礎となるのは「通信の仕組み」だからです。
「IPアドレスとは何か」「なぜWebページが表示されるのか」「サーバーとはどういう役割か」といったITインフラの知識は、どのようなシステムを扱う上でも避けて通れません。
また、多くの未経験者がプログラミングをアピールする中で、「ネットワークの基礎を勉強しています」「自宅でLinuxサーバーを触ってみました」という人材は、面接官(多くの場合は現役の情シス部長など)から見て非常に頼もしく映ります。
YAMAHAのルーターやスイッチの設定まではできなくとも、「つながる仕組み」を理解しようとする姿勢は、大きな差別化要因になります。
戦略3:運用・保守の視点を持つ
システムは「作って終わり」ではありません。
むしろ、完成してから稼働し続ける期間の方が圧倒的に長く、その間の「運用・保守」こそが重要です。
私が専門とするZabbixなどの監視システムも、この「安定して動き続けること」を守るために存在しています。
未経験者の多くは「新しいアプリを作ること」に目を向けがちですが、社内SEの現場では「既存のシステムを止めないこと」「トラブルを未然に防ぐこと」が最優先されます。
したがって、面接や応募書類では「地味な作業でもコツコツと継続できる」「リスクを想定して慎重に行動できる」といった、保守・運用の適性をアピールすることも有効な戦略です。
派手さはなくとも、システムを裏で支えることに誇りを持てる人材であることを伝えてください。
未経験から社内SEになるために合格率を上げる具体的な学習法とロードマップ

最後に、未経験から社内SEになるために、今日から始められる具体的な学習ステップをご紹介します。
まずはITパスポート・基本情報技術者試験の用語理解
まったくの未経験であれば、まずは「ITパスポート」や「基本情報技術者試験」の勉強を通じて、IT用語の全体像を掴むのが良いでしょう。
資格取得そのものが目的というよりは、現場のエンジニアが話す「共通言語」を理解できるようになることが目的です。
試験を主催するIPA(情報処理推進機構)も、これらの資格を「ITの知識・技能に関する共通の評価指標」と定義しており、取得することで技術者とのコミュニケーションが円滑になることを公式にメリットとして挙げています。
参考:情報処理技術者試験のメリット(IPA 独立行政法人 情報処理推進機構)
参考書を一通り読み、分からない単語があればネットで検索して、自分なりに噛み砕いて理解する癖をつけてください。
特にネットワークやセキュリティの分野は、社内SEの実務に直結するため、重点的に学習することをおすすめします。
手を動かす重要性:自宅サーバーやクラウドに触れる
座学だけでなく、実際に手を動かす経験は何よりも重要です。
もし可能であれば、自宅の古いPCにLinux(CentOSやUbuntuなど)をインストールしてみたり、AWSなどのクラウドサービスのアカウントを作って、Webサーバーを立ち上げてみたりしてください。
「黒い画面(ターミナル)にコマンドを打ち込んで、Webページが表示された」という成功体験は、あなたの自信に繋がります。
また、面接で「本を読みました」と言うのと、「実際にAWSで簡単なサーバーを構築しました」と言うのでは、評価に雲泥の差が出ます。
失敗しても再インストールすれば良いだけですので、恐れずに触ってみましょう。
独学が厳しい場合のスクール活用判断
もし、独学での学習に行き詰まったり、何から手をつけていいか分からなくなったりした場合は、ITスクールやエージェントを活用するのも一つの手段です。
特に最近のスクールには、インフラエンジニア向けのコースや、社内SEへの転職支援に特化したコースも存在します。
ただし、スクールに通えば自動的に就職できるわけではありません。
あくまで「効率的に学ぶためのツール」として捉え、主体的に質問し、使い倒すくらいの気持ちで臨むことが大切です。
また、国も社会人のスキルアップを強力に後押ししており、厚生労働省の「教育訓練給付制度」に認定された講座であれば、受講費用の一部が給付される場合もあります。こうした公的な支援制度の対象となっているかは、スクールの質を見極める一つの基準にもなります。
プロの講師から体系的に学ぶことで、独学では気づけなかった「現場の常識」や「実務での勘所」を知ることができるのは、大きなメリットと言えるでしょう。
まとめ:未経験でも「根拠」があれば社内SEは目指せる
今回は、未経験・文系から社内SEを目指すための戦略について解説しました。
改めて要点を整理します。
- 社内SEは未経験でも目指せる:市場は「ポテンシャル採用」へシフトしており、20代や第二新卒には大きなチャンスがあります。
- 文系は強みになる:難解な技術を非エンジニアに伝える「翻訳力」は、社内SEに不可欠なスキルです。
- インフラ知識で差別化する:プログラミングだけでなく、ネットワークやサーバーの基礎を知ることで、実務への適性をアピールできます。
- 運用視点を持つ:「作って終わり」ではなく、システムを安定稼働させることの重要性を理解しましょう。
「未経験だから」と尻込みする必要はありません。
大切なのは、なぜその設定が必要なのか、なぜ自分は社内SEになりたいのかという「根拠」を一つひとつ積み上げることです。
正しい知識と戦略を持って行動すれば、ITインフラを支えるエンジニアとしての道は必ず開けます。
この記事が、あなたの挑戦の第一歩となることを願っています。

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