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警察官として働くホワイトハッカーの年収と採用試験|国のサイバー防衛最前線

インターネットが社会インフラそのものとなった現代において、サイバー攻撃はもはや「対岸の火事」ではありません。

日々ニュースで報じられるランサムウェア被害や不正アクセス事件。

実際、警察庁の発表(令和6年上半期)によると、ランサムウェアの被害件数は依然として高水準で推移しており、フィッシング報告件数も増加の一途をたどっています。これらの脅威は、もはや特定の企業だけの問題ではありません。

参考:令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について – 警察庁

これらに立ち向かう技術者として「ホワイトハッカー」という職業が注目されていますが、その活躍の場は民間企業だけではないことをご存じでしょうか。

国の治安を守る「警察組織」です。

「正義のために技術を使いたい」

「国の重要インフラをサイバー攻撃から守り抜きたい」

もしあなたがそのような熱い志を持っているなら、警察官や警察職員として働く技術職は、天職になり得る選択肢です。

しかし、そこで気になるのは「公務員としての年収」や「採用試験の難易度」、そして「特殊な働き方」の実態でしょう。

この記事では、現役インフラエンジニアとして長年現場を見てきた私の視点から、警察組織におけるホワイトハッカー(サイバー犯罪捜査官・技術職員)のキャリアについて、綺麗事抜きで解説します。

民間のセキュリティエンジニアとは全く異なる「捜査」という権限を持った技術職のリアルを、ぜひ知ってください。

目次

警察組織におけるホワイトハッカーの役割とは

まず理解しておくべきは、警察組織の中で「ホワイトハッカー的な技術」がどのように使われているかという点です。

民間のセキュリティベンダーであれば、クライアント企業のシステムを守り、脆弱性を診断し、インシデント発生時に復旧支援を行うことが主な業務です。

対して警察の業務には、民間には絶対に真似できない強力な権限が付与されています。

それが「捜査権」と「逮捕権」です。

「サイバー犯罪対策課」と「サイバー警察局」の組織構造

警察組織におけるサイバー部隊は、大きく分けて「都道府県警察」と「警察庁」の2つのレイヤーで活動しています。

私たちが普段ニュースで耳にする「警視庁サイバー犯罪対策課」などは、各都道府県警に設置された実働部隊です。

ここでは、管轄内で発生したサイバー犯罪の捜査や、市民からの相談対応、中小企業への啓発活動などが主な任務となります。

一方、国の司令塔である警察庁には、2022年に「サイバー警察局」が新設されました。

この新組織は、従来の都道府県警察の枠組みを超え、重大なサイバー事案に対して国が直接捜査を行うための「実働部隊」としての機能も持っています。

参考:サイバー警察局とは|警察庁Webサイト

これは国境を越える重大なサイバー事案に対して、国が直接指揮を執り、捜査を行うための組織改編です。

技術者としてどちらを目指すかによって、関わる事件のスケールや業務内容が大きく変わってくることをまずは押さえておきましょう。

捜査の現場:解析・デジタルフォレンジック業務の実態

警察の技術職にとって、最も特徴的な業務の一つが「デジタルフォレンジック」です。

これは、犯罪に使用された疑いのあるパソコンやスマートフォン、サーバーなどを解析し、法的な証拠能力を持たせるための鑑識活動を指します。

インフラエンジニアの視点で見れば、これは単なるログ監視とは次元が異なる作業です。

削除されたデータの復元はもちろん、暗号化されたファイルの解読、マルウェアの動作解析(リバースエンジニアリング)、さらには通信ログ(パケットキャプチャデータ)からの足取り追跡などを行います。

サーバーのアクセスログ一つとっても、そこから「誰が、いつ、どのような経路で侵入したか」を特定し、裁判で通用するレベルの報告書にまとめる能力が求められます。

犯人を特定し、追い詰めるための技術。

それが警察におけるホワイトハッカーの仕事の本質です。

民間企業のセキュリティエンジニアとの決定的な違い

技術的なスキルセット(ネットワーク、OS、プログラミング言語の知識)自体は、民間も警察も大きく変わりません。

しかし、その目的意識は正反対と言ってもよいでしょう。

民間企業はあくまで「ビジネス」であり、顧客の利益や資産を守ることが最優先です。

一方、警察官・警察職員は「公共の安全と秩序」を守ることが使命です。

時には採算度外視で、一つの事件解決のために膨大なリソースを投入することもあります。

「技術で金儲けをするのではなく、技術で社会正義を貫きたい」

そう強く思えるかどうかが、このキャリアを選んで後悔しないための最大の分かれ道と言えます。

ホワイトハッカーは「特別職」も? 採用区分と試験難易度

では、具体的にどのようにして警察組織のホワイトハッカーになるのでしょうか。

入り口は一つではなく、あなたの経歴や年齢、保有スキルによっていくつかのルートが存在します。

ここでは代表的な3つの採用パターンについて解説します。

一般警察官(サイバー犯罪捜査官)としての採用

最も一般的なのが、各都道府県警が実施している「サイバー犯罪捜査官」などの専門枠での採用試験を受けるルートです。

これは身分としては「警察官」となります。

そのため、採用後は警察学校に入校し、柔道や剣道、逮捕術、刑法などの訓練を受ける必要があります。

「技術だけやっていたい」という人には、この警察学校での生活や、交番勤務などの現場研修がハードルになるかもしれません。

しかし、捜査員として現場に踏み込み、家宅捜索(ガサ入れ)を行うことができるのは、警察官の身分を持つ者だけの特権です。

試験の難易度としては、公務員試験(教養試験)に加え、情報処理技術者試験(応用情報や高度区分)相当の専門知識が問われます。

倍率は都道府県によって異なりますが、専門枠は採用人数が少ないため、狭き門となる傾向があります。

技術職・研究職(技官・一般職員)としての採用

「警察官としての体力練成は自信がないが、技術力で貢献したい」という場合は、警察職員(地方公務員の行政職・技術職)や、科学捜査研究所(科捜研)の研究員を目指すルートがあります。

これらは警察官ではないため、逮捕権はありませんし、警察学校での厳しい体力トレーニングも基本的には免除(あるいは期間短縮・内容変更)されます。

証拠品の解析や研究開発、所内インフラの整備など、バックオフィスから捜査を支える重要なポジションです。

技術に特化して長く働きたい人にとっては、非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。

警察庁「特定任期付職員」などの特別職採用

近年注目されているのが、警察庁などが実施している、民間からの高度人材登用枠です。

「サイバー特別捜査隊」などにおいて、極めて高度な技術を持つエンジニアを「特定任期付職員」として採用するケースが増えています。

これは、通常の公務員給与規定の枠を超えた待遇で迎えられることもあり、即戦力のホワイトハッカーを求めた採用です。

応募条件として、セキュリティ関連業務の実務経験(5年以上など)や、CISSP、情報処理安全確保支援士などの高度資格が求められることが一般的です。

まさに、実績のあるエンジニアが「国のために一肌脱ぐ」ためのキャリアパスと言えます。

実際に、2025年には大手電機メーカー(NEC)のセキュリティ専門家が、警視庁初の任期付警察官(階級:警部)として採用された事例も公表されており、民間トップレベルの技術者が捜査の現場に立つケースは現実のものとなっています。

参考:NECのサイバーセキュリティ人材が警視庁初の任期付警察官「サイバー犯罪捜査官」に就任

警察で働くホワイトハッカーの気になる年収・待遇のリアル

仕事のやりがいが素晴らしいことは理解できても、やはり生活を支える収入面は無視できません。

「公務員は安月給」というイメージがあるかもしれませんが、実際はどうなのでしょうか。

公務員としての給与体系(俸給表)と安定性

警察官や警察職員の給与は、法律や条例で定められた「俸給表」に基づいて決定されます。

基本的には年功序列で、年齢と階級が上がるにつれて確実に昇給していきます。

一般的な行政職公務員と比較すると、警察官には「公安職俸給表」が適用されることが多く、基本給の水準が1割〜2割程度高く設定されています。

20代〜30代の若手のうちは、民間の大手IT企業や外資系ベンダーと比較すると、正直なところ見劣りするかもしれません。

しかし、賞与(ボーナス)が安定して支給される点や、退職金制度、手厚い福利厚生を含めた生涯年収で見れば、決して悪い待遇ではありません。

不景気でリストラされるリスクがほぼゼロである点も、インフラエンジニアとして「可用性(安定稼働)」を重視する私のような人間からすると、大きなメリットに見えます。

警察ならではの手当と福利厚生

給与面で見逃せないのが、警察特有の諸手当です。

夜間の張り込みや緊急呼び出しに対する手当、危険手当などが業務内容に応じて支給されます。

また、官舎(社宅)が格安で利用できることが多く、住居費を大幅に抑えることができます。

可処分所得で考えると、額面の年収差以上に余裕のある生活ができるケースも少なくありません。

民間へ転職する際のキャリアパスとしての価値

もう一つの視点として、「セカンドキャリア」についても触れておきます。

警察組織で数年間、サイバー犯罪捜査の実務経験を積んだという実績は、民間のセキュリティ業界において極めて高いブランド価値を持ちます。

「元サイバー捜査官」という肩書は、技術力だけでなく、高い倫理観と法的な知識を持っていることの証明になるからです。

事実、警察を退職後に大手コンサルティングファームやセキュリティベンダーに転職し、大幅な年収アップを実現している元警察官も数多く存在します。

キャリアの第一歩として、あえて厳しい警察組織を選ぶという戦略も、十分に合理的だと私は考えます。

ホワイトハッカーの採用試験に向けた対策と求められるスキル

最後に、警察の技術職を目指すにあたって、どのような準備が必要かを整理しておきます。

必須となるITスキルと資格

採用試験の段階で評価されるのは、やはり「客観的な技術力の証明」です。

国家資格である「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」や「ネットワークスペシャリスト」などは、知識のベースラインとして非常に高く評価されます。

実務レベルでは、Linuxサーバーの構築・運用経験、PythonやC言語によるプログラミング能力、Wiresharkなどを用いたパケット解析のスキルが役立ちます。

私が普段扱っているZabbixなどの監視ツールを用いたトラフィック分析の知識も、不正アクセスの予兆検知といった分野で応用が利くでしょう。

「動けばいい」ではなく、「なぜその通信が発生しているのか」を論理的に説明できる基礎力が問われます。

公務員試験特有の教養試験対策

多くの採用区分において、避けて通れないのが「教養試験」です。

数的処理、文章理解、社会科学など、ITスキルとは無関係な分野の勉強も必要になります。

技術屋としては苦痛に感じるかもしれませんが、警察官は報告書の作成や法解釈など、論理的思考力と事務処理能力が求められる仕事です。

こればかりは過去問を繰り返し解き、傾向に慣れておくしかありません。

身辺調査と倫理観(ホワイトハッカーとしての資質)

最後に最も重要なのが「倫理観」です。

警察官の採用においては、厳格な身辺調査が行われます。

過去に重大な交通違反や犯罪歴がないことはもちろん、素行や人間性が厳しくチェックされます。

ホワイトハッカーは「攻撃者の手口」を知り尽くしているため、その知識を悪用すれば容易に犯罪者になれてしまいます。

だからこそ、誰よりも強い正義感と自制心が求められるのです。

まとめ:警察官として働くホワイトハッカーの年収と採用試験は?

警察官として働くホワイトハッカーというキャリアは、決して楽な道ではありません。

民間のエンジニアのように自由な働き方ができるわけではなく、組織の規律や階級社会の中で働く窮屈さもあるでしょう。

しかし、「国の秩序を守る」という巨大な責任と、最前線でサイバー犯罪と対峙する緊張感は、他のどんな仕事でも味わえないものです。

この記事の要点をまとめます。

  • 役割の違い: 民間は「利益と顧客」を守り、警察は「公共の正義」を守る。捜査権と逮捕権が最大の武器。
  • 採用ルート: 「警察官(要警察学校)」「技術職員(捜査権なし)」「特別職(即戦力)」の3パターンがある。
  • 年収と待遇: 若手は民間大手に劣るが、公安職俸給表や手当、福利厚生により生涯年収は安定している。
  • キャリア価値: 「元サイバー捜査官」の経歴は、将来的に民間へ移る際にも強力な武器になる。

もしあなたが、技術者としての腕を「誰かの平穏な日常」のために使いたいと本気で願うなら。

そして、コマンド一つ一つに「根拠」と「責任」を持てるエンジニアでありたいと思うなら。

日本のサイバー防衛の最前線に飛び込んでみる価値は、十分にあるはずです。

まずは各都道府県警の採用サイトや、警察庁の募集要項を確認し、求められている要件と自分のスキルを照らし合わせることから始めてみてください。

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