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AWSクラウドの基礎を固める:AMI、スナップショット、ボリュームの関係性を徹底解説

クラウドインフラストラクチャの設計と運用において、バックアップ戦略とデータ管理は最も重要な要素の一つです。特にAWSを利用する多くの組織にとって、AMI(Amazon Machine Image)、EBSスナップショット、EBSボリュームの概念とその関係性を正確に理解することは、堅牢なシステム構築の基盤となります。

しかしながら、これらの概念は密接に関連しながらも異なる役割を持つため、初学者だけでなく経験あるエンジニアにとっても混乱しやすいポイントです。「AMIとスナップショットの違いは何か?」「どのような場合にAMIを使い、どのような場合にスナップショットを使うべきか?」「これらのコンポーネントがどのように連携しているのか?」といった疑問は、多くの技術者が直面する課題です。

本記事では、AWS環境におけるAMI、EBSスナップショット、EBSボリュームの基本概念から始め、それらの関係性を深掘りし、効率的なバックアップ戦略や災害復旧計画にどのように活用すべきかまで、体系的に解説します。図解や実際のコマンド例も交えながら、これらのコンポーネントの相互作用を明確にし、コスト効率の良いクラウドリソース管理の知識を提供します。

目次

1. 各コンポーネントの基本概念

Amazon EBS ボリューム

  • 定義: Amazon Elastic Block Store (EBS) ボリュームは、EC2インスタンスにアタッチできる耐久性の高いブロックレベルのストレージデバイスです。
  • 特徴:
    • 物理的なハードドライブのように機能し、EC2インスタンスにアタッチして使用
    • 同じアベイラビリティーゾーン内の複数のサーバーにレプリケートされた高い耐久性
    • 年間故障率(AFR)は0.1%~0.2%と非常に低い
    • インスタンスから独立して存在し、インスタンスのライフサイクルとは切り離して管理可能

EBSスナップショット

  • 定義: EBSボリュームのある時点でのバックアップコピーです。
  • 特徴:
    • 特定の時点におけるEBSボリュームのデータをキャプチャ
    • Amazon S3に保存され、複数のアベイラビリティーゾーンに冗長的に保存
    • 増分バックアップ方式を採用(変更されたブロックのみを保存)
    • 新しいEBSボリュームの作成に使用可能

Amazon Machine Image (AMI)

  • 定義: EC2インスタンスの起動に必要な情報を含むテンプレートです。
  • 特徴:
    • オペレーティングシステム、アプリケーションサーバー、アプリケーションなどを含む
    • 内部的にEBSスナップショットを参照して保持
    • 起動許可を制御し、どのAWSアカウントがAMIを使用できるかを管理
    • インスタンスの起動時にボリュームをアタッチするための情報(ブロックデバイスマッピング)を含む

2. 三者の関係性

AMIとスナップショットの関係

AMIとスナップショットの関係
  • AMIはスナップショットを内包する: AMIを作成すると、その時点でインスタンスにアタッチされていた全てのEBSボリュームのスナップショットが自動的に作成されます。
  • 参照関係: AMIはこれらのスナップショットを参照することで、インスタンス起動時に必要なボリュームを再現できます。
  • データ構造: AMIのBlockDeviceMappings属性内にSnapshotIdとして関連するスナップショットのIDが保存されています。
  • 一方向の関係: AMIからはスナップショットの情報を簡単に取得できますが、スナップショットからどのAMIに関連しているかを直接取得することは困難です(Descriptionフィールドに記載されている場合があります)。

スナップショットとボリュームの関係

  • スナップショットはボリュームのコピー: スナップショットはボリュームのデータをある時点で切り取ったコピーです。
  • 復元関係: スナップショットから新しいEBSボリュームを作成できます。
  • 増分バックアップ: 初回のスナップショットはフルバックアップ、以降は差分のみを保存するため効率的です。
  • データ保存場所: ボリュームはEC2インスタンスにアタッチされますが、スナップショットはAmazon S3に保存されます(ただし、S3バケットとして直接アクセスはできません)。

AMIとボリュームの関係

  • 起動時の関係: AMIからEC2インスタンスを起動すると、AMIに関連付けられたスナップショットから新しいEBSボリュームが作成され、インスタンスにアタッチされます。
  • ブートボリューム: AMIには少なくともルートデバイス用のボリューム情報(スナップショット)が含まれています。
  • 追加ボリューム: AMI作成時にインスタンスに接続されていた追加ボリュームの情報も含むことができます。
  • 設定情報: AMIにはボリュームをどのようにインスタンスにアタッチするかの情報も含まれています。

3. データライフサイクルの流れ

標準的なライフサイクルプロセス

  1. ボリュームの作成:
    • 空のボリュームを作成するか、既存のスナップショットからボリュームを作成します。
  2. ボリュームの使用:
    • 作成したボリュームをEC2インスタンスにアタッチし、マウントして使用します。
  3. スナップショットの作成:
    • データのバックアップとして特定の時点でのボリュームのスナップショットを作成します。
    • スナップショットはAmazon S3に保存され、高い耐久性を確保します。
  4. AMIの作成:
    • インスタンス全体をテンプレート化したい場合は、インスタンスからAMIを作成します。
    • AMI作成時には、アタッチされている全てのボリュームのスナップショットが自動的に作成されます。
  5. インスタンスの起動:
    • 作成したAMIを使用して新しいEC2インスタンスを起動します。
    • 起動時にAMIに関連付けられたスナップショットから新しいボリュームが作成されます。
  6. ライフサイクル管理:
    • Amazon Data Lifecycle Managerを使用して、スナップショットとAMIの作成、保持、削除を自動化できます。

運用上の関係

  • バックアップ戦略:
    • AMIはシステム全体のバックアップに適しており、インスタンス全体の状態を復元するために使用します。
    • スナップショットは特定のデータボリュームのバックアップに適しており、より細かな粒度で管理できます。
  • コスト効率:
    • スナップショットは増分的に保存されるため、変更されたデータのみを保存してコストを削減します。
    • AMIはスナップショットを内包するため、AMI自体のストレージコストは発生しませんが、関連するスナップショットの保存コストが発生します。
  • 運用の自動化:
    • AWS Backupやデータライフサイクルマネージャーを使用して、スナップショットとAMIの作成と管理を自動化できます。
    • タグを活用して、コスト配分、監査、トラブルシューティング、通知などに役立てることができます。

4. 実装例と図解

関係性の図解

       [EC2インスタンス]
              │
              ├──アタッチ──→ [EBSボリューム] ───スナップショット作成──→ [EBSスナップショット]
              │                    │                                           │
              │                    │                                           │
              ↓                    │                                           │
       [AMI作成]──────────────────参照───────────────────────────────────────→│
              │                                                                │
              ↓                                                                ↓
      [新しいEC2インスタンス] ←──起動時にボリューム作成──────────── [新しいEBSボリューム]

実際の操作例

  1. EC2インスタンスからAMIを作成する場合:# AMIの作成(自動的に関連するボリュームのスナップショットも作成される) aws ec2 create-image --instance-id i-1234567890abcdef0 --name "My AMI"
  2. AMIから関連するスナップショットを見つける:# AMIに関連するスナップショットIDを取得 aws ec2 describe-images --image-ids ami-1234567890abcdef0 --query 'Images[*].{ImageId:ImageId, SnapshotId:BlockDeviceMappings[*].Ebs.SnapshotId}' --output json
  3. スナップショットからボリュームを作成:# スナップショットから新しいボリュームを作成 aws ec2 create-volume --snapshot-id snap-1234567890abcdef0 --availability-zone us-west-2a

5. 運用上の留意点

バックアップと復元の選択

  • AMIを使用する場合:
    • インスタンスの完全なバックアップ/複製が必要な場合
    • 同じ構成で複数のインスタンスを起動する必要がある場合
    • システム全体の状態を保持する必要がある場合
  • スナップショットを使用する場合:
    • データのみのバックアップが必要な場合
    • ボリュームサイズを変更する場合
    • 特定のボリュームのみを復元したい場合
    • 効率的な差分バックアップが必要な場合

タグ付けとライフサイクル管理

  • バックアップに適切なタグを付けることで、管理が容易になり、誤った削除を防止できます。
  • Amazon Data Lifecycle Managerを使用して、スナップショットとAMIの作成、保存、削除を自動化できます。
  • クロスリージョンコピーやクロスアカウントコピーを活用して、ディザスタリカバリ戦略を強化できます。

まとめ

AWSにおけるAMI、スナップショット、ボリュームは密接に関連した要素であり、それぞれ異なる目的と使用方法を持っています。

  • EBSボリュームは実際にデータを保存する物理的なストレージユニットです。
  • スナップショットはボリュームの特定時点のコピーで、バックアップやデータ移行に使用されます。
  • AMIはEC2インスタンスを起動するためのテンプレートで、内部的にスナップショットを参照しています。

これらのコンポーネントを適切に連携させることで、効率的なバックアップ戦略、複製戦略、ディザスタリカバリ戦略を構築できます。AWS環境での効果的なストレージ管理とシステム運用には、これらの関係性を理解することが不可欠です。

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