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AIが見つける脆弱性は増えている?PHP2Shellの例と運営者が変えること

AIが見つける脆弱性は増えている?PHP2Shellの例と運営者が変えること

脆弱性の数は増えています。脆弱性の識別番号「CVE」の公開件数は、米国の脆弱性データベース NVD で2026年1月1日〜10月24日に86,402件と、前年同期(38,670件)の約2.2倍でした(当サイトが NVD の API で集計)。2026年10月に修正された PHP の重大な脆弱性「PHP2Shell」でも、発見した各社が AI モデルを使ったと公表しています。この記事では、増加の数字、PHP2Shell の発見と防御、利用者・サイト運営者が変えることを、CVE.org・NVD・米CISA・PHP公式・JPCERT/CC・IPA と、関わった企業の一次発表(2026年10月25日確認)だけで整理します。報道や専門家のコメントは使っていません。

【結論】CVE の公開件数は前年同期の約2.2倍(NVD・1月1日〜10月24日)。米CISA が悪用を確認して登録した件数は約1.3倍(272件・前年同期210件)で、増え方は CVE より小さめです。

  • AI の影響:VulnCheck の分析によると、CVE の前年比の伸びは100%で、AI ツールによる発見と採番機関の体制拡大の組み合わせによるものとみられます。
  • PHP2Shell:OpenAI は、Calif が GPT-5.6 Sol を使って欠陥を特定し、Wiz も独自に発見・報告したと公表。PHP公式の告知に発見者の記載はありません。
  • 運営者がすること:PHP本体の版を把握してサポート終了版から移り、公式の告知を受け取れるようにします。プラグインの更新では直らず、WAF があっても PHP の更新が求められています。
目次

早見表:一次資料でわかること

知りたいこと一次資料に書かれていること
増えている?CVE は NVD で86,402件(2026年1月1日〜10月24日・前年同期38,670件)。米CISA の悪用確認済みリスト(KEV)への追加は272件(前年同期210件)
AI の役割VulnCheck の報告受付では、報告が1年で10倍・51%が AI で見つけたと自己申告。PHP2Shell は Calif と Wiz が AI モデルを使ったと公表
守る側の変化PHP公式が事前にディストリビューションへパッチを渡し、前日に告知。Cloudflare は公開の約9時間前に WAF ルールを展開
利用者がすることPHP本体を修正版に更新し、サポート終了版から移る。プラグインの更新では直らず、WAF があっても更新が必要(Cloudflare)

脆弱性の数は本当に増えている? CVE と KEV の件数

性格の違う3つの一次データを並べました。

年CVE.org(公開された CVE レコード)NVD(公開日・取り下げを除く)米CISA KEV(追加日)
2024年40,077件(通年)31,686件(1月1日〜10月24日)/39,953件(通年)148件(1月1日〜10月24日)/186件(通年)
2025年48,244件(通年)38,670件(同)/48,151件(通年)210件(同)/245件(通年)
2026年35,885件(1〜6月。前年同期23,710件)86,402件(1月1日〜10月24日)272件(1月1日〜10月24日)

CVE.org は四半期報告の件数を当サイトで合計したものです(7〜9月の報告は10月25日時点で未掲載)。NVD は API で公開日を指定して、KEV は CISA の JSON(カタログ版 2026.10.23)の追加日を年別に、いずれも10月25日に当サイトで集計しました。

CVE は2025年に前年の約1.2倍、2026年はさらに増えています(NVD の同期比で約2.2倍、CVE.org の1〜6月で約1.5倍)。KEV の追加は約1.3倍です。

研究会社の VulnCheck は10月22日、自社の分析として次のように述べています。

  • 脆弱性報告の受付サービスへの研究者からの報告がこの1年で10倍になり、51%が AI を使って見つけたと自己申告している
  • CVE は前年比100%の伸びで、AI ツールによる発見と、CVE を採番する機関(CNA)の体制拡大の組み合わせによるものとみられる
  • CVE の公開から KEV に載るまでの中央値は、2025年の120日から2026年上半期は80日に短くなった

なお、CVE.org・NVD・KEV の統計に AI が見つけたかどうかの区分はなく、増えた分のうち AI によるものが何件かは公式の数字からはわかりません。

AI が脆弱性を見つけた例(開発元の公式発表)

  • Google:AI エージェント「Big Sleep」が SQLite の未知の脆弱性を見つけたと2024年11月1日に公表しました(正式リリース前で利用者への影響なし)。2025年7月15日には、Big Sleep が攻撃者だけが知っていた SQLite の CVE-2025-6965 を見つけ、悪用を先に防いだと公表しました。
  • Anthropic:2026年4月7日に「Project Glasswing」を発表し、未公開のモデル Claude Mythos Preview が主要な OS や Web ブラウザーを含む数千件の深刻度の高い脆弱性を見つけたとしています。一方 VulnCheck の集計(2026年4月15日時点)では、Anthropic の研究者がクレジットされた CVE は40件でした。

PHP2Shell はどう見つかり、どう守られたか

PHP2Shell は PHP 本体の脆弱性(CVE-2026-109618・CVE-2026-109619)の呼び名で、PHP公式は2026年10月21日、認証なしのリモートコード実行につながるとして修正版(8.5.12・8.4.27・8.3.36・8.2.35)を公開しました。対象や更新手順はPHPの重大脆弱性php2shellの解説にまとめています。

発見:複数の研究者が AI を使って報告

  • PHP公式:告知に発見者の記載はありません。GitHub のアドバイザリ(GHSA)の Credits 欄には、報告者(Reporter)として lcfr-hax・sagitzadik-wiz・tomash-areion・amyb-oai の4アカウントが載っていますが、AI ツールの記載はありません。
  • Calif:8月1日に複数の経路を見つけ、8月11日に PHP へ報告したとしています。研究者の Ryan Austin(@lcfr_hax)は LLM(大規模言語モデル)の助けを借りたと書いています。
  • OpenAI:Calif が OpenAI の「Patch the Planet」の一環として GPT-5.6 Sol を使って欠陥を特定し、Wiz も独自に2件とも発見・報告したと公表しています。
  • Wiz:8月19日に Wiz Atlas・Gemini 4 Argon・GPT-5.6 Sol を使って最初の脆弱性を見つけ、24日に報告したとしています。欠陥は10年以上前からあり、悪用の実証の難しさを最先端の AI モデルが大きく下げたという見方です。

Calif によると、関連するメモリ不足の問題は2020年のバグ報告や2024年の OSTIF と Quarkslab の監査でも見つかっていましたが、悪用が証明されず修正されていませんでした。

時系列:発見から公開・各社の対応まで

時刻は日本時間に換算しました。

日付出来事出典
2026年8月1日〜21日Calif が発見(1日)、PHP に報告(11日)、2件目を報告(21日)Calif
8月19日〜9月21日Wiz が発見(8月19日)・報告(24日)。PHP が報告を認め修正の開発を開始(9月21日)Wiz
10月21日 5:32PHP公式が修正版の公開を事前告知(公開予定は同日23:00)。IPA も同日に事前準備を呼びかけPHP公式・IPA
10月21日 12:02Cloudflare の無料・有料の WAF で既定の防御が有効に(公開の約9時間前と説明)Cloudflare
10月21日 17:37VulnCheck のおとりサーバーが、この脆弱性を狙うとみられるスキャンを最初に記録VulnCheck
10月21日 夜修正版とアドバイザリを公開(GHSA は22:34)。同日、Calif・Wiz・OpenAI・Cloudflare も解説を公開PHP公式・各社
10月22日JPCERT/CC が注意喚起(JPCERT-AT-2026-0033)、IPA が「PHPの脆弱性対策について」を公開。VulnCheck のおとりサーバーで Webシェル(遠隔操作用のファイル)設置の試みを記録(失敗)JPCERT/CC・IPA・VulnCheck
10月23日PHP公式が関連する CVE-2026-115560 を告知(修正版にも影響・次の定例リリースで修正)。Cloudflare は、既定の設定なら既存ルールで既知の攻撃を防げると追記PHP公式・Cloudflare

VulnCheck と Cloudflare は、予定より前に情報が漏れたとしています。事前告知のしくみはPHPの脆弱性修正はなぜ前日に予告されたかで解説しています。

守る側:公開前に準備がそろった

  • 事前のパッチ提供:PHP公式によると、Linux ディストリビューションと LTS ベンダーは事前にパッチを受け取っていました。
  • 公開前の WAF ルール:Cloudflare は無料プランを含む WAF の利用者に、操作なしで防御ルールを適用しました。リクエストとサーバーの応答をあわせて判定する新しい仕組みを使ったとし、そのうえで WAF があっても PHP を更新するよう求めています。
  • 対応の枠組み:OpenAI は、修正の検証・影響を受ける組織への準備期間・政府機関との連携・影響製品の更新準備・公開後のガイダンスの5段階を提案しました。「To our knowledge, frontier AI found these vulnerabilities before attackers did」(訳:知る限り、攻撃者より先に最先端の AI がこれらの脆弱性を見つけた)とし、同様の発見は今後数か月で急増すると見込んでいます。

レンタルサーバー・クラウド各社の対応はphp2shell 各社の対応状況まとめで更新しています。

公開後:スキャンと実証コードの増加

VulnCheck は、GitHub に数百の実証コード(PoC)のリポジトリが出回ったものの、本物の攻撃コードはごく少数だったとしています。また、インターネットから見える PHP のホスト2,608,039台のうち110万台超(約42%)が、修正版の出ないサポート終了版だったと報告しています。米CISA の KEV には、10月23日版の時点で PHP2Shell の2件は載っていません。

利用者・サイト運営者が今までと変えること

VulnCheck は、CVE は増え続けると見込み、対応にかけられる時間が短くなる前提で計画するよう勧めています。一次資料が挙げる対応を立場別にまとめます。

ブログ・サイトの運営者(レンタルサーバー・WordPress)

  • PHP本体の版を把握する:Cloudflare は、今回の欠陥は PHP の実行環境にあり、サイトのコードやプラグインの更新だけでは直らないとし、ホスティング会社が PHP を管理している場合は更新の適用を求めるよう案内しています。WordPress なら「サイトヘルス」→「情報」で確認できます。
  • サポート終了版を使い続けない:PHP 8.1以前は PHP プロジェクトからの更新がなく、PHP 8.2 も2026年12月31日でサポートが終わります(PHP公式)。
  • 告知を受け取る経路を決めておく:今回、事前告知から公開予定までは1日足らずでした。PHP公式・JPCERT/CC・IPA と、契約しているサーバー会社のお知らせを確認できるようにしておきます。VulnCheck はパッチ適用の自動化の検討も挙げています。
  • WAF は追加の守り:Cloudflare は更新中も WAF を有効にしておくよう勧め、WAF があっても PHP を更新するよう求めています。PHP公式も、更新だけが完全な解決策としています。

自分でサーバーを管理している場合

  • 修正版(または OS・ベンダーの修正済みパッケージ)に更新し、PHP のプロセスを再起動します。
  • JPCERT/CC は侵害調査として、異常に長い・形式のおかしい PHPSESSID の Cookie、不審な multipart/form-data のリクエストと前後のメモリ上限エラーや HTTP 500、ワーカーの異常終了や頻繁な再起動の確認を挙げ、「上述の痕跡が確認されない場合でも、本脆弱性を悪用した攻撃を受けていないと断定することはできません」としています。
  • PHP公式は CVE-2026-115560 について、次の定例リリースまで session.upload_progress.enabled=0 にするよう提案しています。
  • VulnCheck は、件数より悪用の証拠などで優先順位をつけることを勧めています。

サイトを使う側(一般の利用者)

PHP2Shell はサーバー側の脆弱性で、PHP公式・JPCERT/CC・IPA の告知に一般の閲覧者向けの対策は書かれていません。利用しているサービスから連絡があった場合は、そのサービスの公式発表で内容を確かめます。

公式に記載がないこと(2026年10月25日確認)

  • AI が見つけた脆弱性の件数・割合:CVE.org・NVD・CISA の統計に区分がありません。VulnCheck の51%は自社の受付サービスに限った数字です。
  • PHP2Shell の発見者:PHP公式の告知に記載がなく、GHSA はアカウント名のみです。AI の使用は Calif・Wiz・OpenAI の自社発表によるものです。Cloudflare は公表した組織に Quarkslab も挙げていますが、Quarkslab のブログに本件の記事は見当たりませんでした。
  • 古い版の範囲:GHSA の影響バージョンは 8.2〜8.5 の各系列で示され、Wiz・Calif・Cloudflare は PHP 5.4 以降が影響を受けるとしています。
  • 情報が漏れた経緯:VulnCheck と Cloudflare は予定前に漏れたとしていますが、経緯の記載はありません。
  • 悪用の被害:KEV への掲載はなく、JPCERT/CC の注意喚起にも悪用の有無の記載はありません。国内の被害を公的機関が発表したものは確認できませんでした。攻撃者が AI を使ったかどうかも記載がありません。
  • CVE-2026-115560 の修正日:PHP公式の記載は「until the next regular bugfix release」(次の定例リリースまで)のみです。

関連記事:FortiBleedとは?FortiGate認証情報の漏えいは新しい脆弱性か

よくある質問

AIのせいで脆弱性は増えているのですか?

CVEの公開件数は増えています。NVDでは2026年1月1日〜10月24日に86,402件で、前年同期の約2.2倍です。VulnCheckの分析によると、AIツールによる発見と、CVEを採番する機関の体制拡大の組み合わせによるものとみられます。公式の統計に、AIが見つけた件数の区分はありません。

PHP2ShellはAIが見つけたのですか?

OpenAIは、CalifがGPT-5.6 Solを使って欠陥を特定し、Wizも独自に発見・報告したと公表しています。WizはWiz Atlas・Gemini 4 Argon・GPT-5.6 Solを使ったとしています。PHP公式の告知には発見者の記載がありません。

悪用される脆弱性も同じように増えていますか?

米CISAのKEVへの追加は2026年1月1日〜10月24日で272件、前年同期は210件で、CVEほどの増え方ではありません。VulnCheckの分析では、CVEの公開からKEVに載るまでの中央値は2025年の120日から2026年上半期は80日に短くなっています。

ブログの運営者は何を変えればいいですか?

PHP本体の版を把握してサポート終了版から移り、サーバー会社やPHP公式・JPCERT/CC・IPAの告知を受け取れるようにしておきます。Cloudflareは、今回の脆弱性はサイトのコードやプラグインの更新だけでは直らないと説明しています。

WAFがあれば更新しなくても大丈夫ですか?

いいえ。CloudflareはWAFがあってもPHPを更新するよう求めており、PHP公式も更新だけが完全な解決策としています。

まとめ

  • CVE の公開は NVD で2026年1月1日〜10月24日に86,402件(前年同期の約2.2倍)。KEV への追加は272件(約1.3倍)
  • PHP2Shell は Calif と Wiz が AI モデルを使って見つけたと公表。PHP公式の告知に発見者の記載はない
  • 公開前に、ディストリビューションへのパッチ提供・前日の告知・Cloudflare の WAF ルールの展開が行われた
  • 運営者は PHP本体の版を把握し、サポート終了版から移り、公式の告知を受け取れるようにする

この記事は、2026年10月25日に確認した一次資料の内容で書いています。続報は PHP公式・JPCERT/CC・IPA の発表を優先してください。

出典

いずれも2026年10月25日に確認。

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